在宅医療の本質
生活に寄り添う現場から

#03
訪問看護、理学療法士
林さん、山口さん
医療法人社団明和会 公式アンバサダー
サンフレッチェ広島
森﨑和幸
COLUMNコラム

数値の先にある「心」を診る。訪問看護が紡ぐ信頼関係

“一日会長”としての初仕事は、訪問看護の現場に同行することから始まりました。ご利用者様のご自宅を訪ねると、看護師の林さんが体温・血圧・酸素濃度を手際よく測定します。森﨑さんの登場に少し緊張されたのか、血圧が普段より高めに出る場面もありましたが、これも現場のリアルです。
訪問看護では数値の測定だけでなく、全身状態や精神面の変化も細かく観察し、リハビリを安全に続けられるかを見極めています。この日は足の冷えが見られたため足湯も行われました。血流を促しながら皮膚の状態を確認し、会話を交わしながら安心して過ごせる時間をつくります。

麻痺がありながらも歩く努力を続けるご利用者様の成果を、自分のことのように喜ぶ林さん。その深い信頼関係を目の当たりにした森﨑さんは、「心を委ねてリラックスしている姿に、多くのことを学ばせてもらった」と、深く感銘を受けていました。

病院の外こそが「リハビリの舞台」

続いて向かったのは、理学療法士の山口さんが担当する訪問リハビリの現場です。訪問リハビリは、病院とは異なり「生活している場所」で身体の動きを確認しながら進めていく点が特徴です。

リハビリは身体を動かす前の体調確認から始まります。嚥下(飲み込み)の状態や声のかすれの有無など、日常生活に関わる身体機能を確認していきます。測定中、森﨑さんは高齢の方には聞き取りにくい体温計の電子音について、「音ではなく振動で知らせる機能があればいいのに」と提案。山口さんも「それは良いですね」と応じ、現場ならではの視点が交わされました。
この日のリハビリは、ご自宅周辺を歩く訓練です。山口さんは体調に合わせて歩く速度や距離を調整し、歩幅を合わせて寄り添いながら歩き方の変化を観察します。帰宅後には「今日は足の引きずりがなかったです」とご家族へ伝えます。その様子を見た森﨑さんは「生活の中でどう動くかまで考えられていることに驚いた」と話していました。

次の一歩へ。生活の場に寄り添う医療

実際の訪問現場を自身の目で確かめた森﨑さんは、地域医療の現場で行われている支援の意味を改めて実感したといいます。「リハビリは施設の中で行うものだと思っていましたが、ご自宅の外に出て、日常の生活をどう送るかを考えながら進めていく姿を見て、これまでの固定観念が覆されました」と語ります。
リハビリは、測定から始まり、対話を通じて悩みやニーズを丁寧に把握し、その方にとって必要な次の一歩を考えながら進めていきます。その過程を目の当たりにした森﨑さんは、スタッフが何を大切にし、ご利用者様がどのような思いで日々を過ごしているのかを理解できたと話していました。
訪問看護と訪問リハビリの現場を通して見えてきたのは、生活の場の中で人を支える医療の姿でした。

視察の最後、森﨑さんは山口さんに問いかけました。「現場を見た次は、何を勉強したらいいでしょうか。」返ってきた答えは、大野浦病院が大切にしている取り組みでした。それは「食べること」、そして「食べる力を取り戻す支援」です。
次回、プロジェクトは「食べること」をテーマに、その力を取り戻す支援の現場へと足を踏み入れます。